2015年の世界の民間インフラ投資は横ばいの11兆円、太陽光が増大、世銀
ワシントン、2016年6月13日 — 世界銀行グループの民間インフラ参入データベースの最新版によると、2015年の世界の民間インフラ投資は、前年同様堅調で1,116億ドルであった。中でも、太陽光エネルギーへの投資が過去5年の平均を72%上回ったのをはじめ、民間参入の進む再生可能エネルギーが全体の3分の2近くを占めた。
2015年は、7件のプロジェクト(総額で過去最高の447億ドル)の契約締結のあったトルコが、全体の水準を引き上げた。特にトルコの超大型案件2件が世界全体の投資額の40%を占めるに至っている。いずれも運輸セクターで、1件は、Istanbul Grand Airport (IGA) が建設・運営を手掛ける356億ドルに上るイスタンブールの新空港プロジェクト(営業権として政府に支払う291億ドルを含む)、もう1件は、64億ドルのゲブゼ-イズミル間自動車道である。
前年比でほぼ横ばいだったとは言え、2015年の世界の民間インフラ投資は、中国、ブラジル、インドに対する投資誓約額が減少したため、過去5年間の平均を10%下回っている。特に対ブラジル投資は、過去5年間の投資拡大傾向から一転し、2014年の472億ドルを大きく下回る45億ドルとなっている。同3カ国はこれまで、世界のプロジェクト全体の44%を占めるなど中心的存在であったが、2015年は2014年の54%から大幅に減少してわずか10%にとどまった。
「今回のデータで、(中国、ブラジル、インドを除く)その他の新興国への投資が、前年比92%増の999億ドルまで急伸した事が分かる。その内11カ国が、2015年に10億ドル以上の投資を誓約しているが、これは、従来の水準を大きく上回っている。エルサルバドル、ジョージア、リトアニア、モンテネグロ、ウガンダ、ザンビアなどは、2年以上の中断の後、投資が再開されている。地域別に見ると、アフリカ、ヨーロッパ・中央アジアで民間インフラ投資が拡大した一方、東アジア・大洋州、ラテンアメリカ・カリブ海、中東・北アフリカ、南アジアでは減少した。」と、世界銀行グループのクライブ・ハリス・プラクティス・マネージャー(官民パートナーシップ担当)は述べた。
2015年、太陽光発電への民間インフラ投資が過去5年間の72%増に当たる94億ドルに膨らむなど、再生可能エネルギーへの投資が躍進した。再生可能エネルギーは、風力、水力、地熱による発電の導入拡大を受け、世界のエネルギー投資総額の63%を占めるまでになった。投資誓約額が最大だったのは運輸セクターで、世界のインフラ投資総額の63%に当たる699億ドル、次いで、エネルギーが34%、水が4%であった。件数で見ると、2015年、300件のプロジェクトの内、エネルギーが205件と最も多く、運輸(55件)や上下水道(40件)をはるかに上回った。
プロジェクトの規模も、過去4年間に拡大しており、2015年は平均的規模が過去最高の4億1,930万ドルを記録した。実際、2015年は超大型案件が大きな割合を占め、5億ドルを超えるプロジェクトは過去最高の40件であった。2015年の投資額で見たトップ5カ国は、トルコ、コロンビア、ペルー、フィリピン、ブラジルで、途上国に対する世界全体の投資誓約額の66%に相当する740億ドルを集めた。
世界銀行グループの民間インフラ参入データベースは、途上国の動向に関する世界でも有数のデータソースであり、エネルギー、運輸、上下道の各部門のインフラ・プロジェクトを網羅している。同データベースは、1990年~2015年を対象期間とし、139の低・中所得国における8千件以上のプロジェクトを取り上げ、新興国における民間インフラ投資について幅広いデータを提供している。