2017-03-15

イエメンで1700万人が深刻な食糧不足、国連3機関が報告書

ユニセフ(国連児童基金)、FAO(国連食糧農業機関)およびWFP(世界食糧計画)は、紛争が長期化するイエメンの食糧危機に関する報告を共同で発表し警鐘を鳴らしました。

1,700万人が深刻な食糧不足

本日、政府および国連機関と人道支援のパートナー団体により発表された、総合的食糧安全保障レベル分類 (Integrated Food Security Phase Classification、略称IPC)の最新報告書によると、紛争が長引くイエメンでは1,700万人以上が深刻な食糧不足に晒されています。

イエメンの22の州のうち20州が、食糧不足の「緊急的」あるいは「危機的」段階にあり、人口のほぼ3分の2が飢餓に直面し、命と生活を守る緊急支援を必要としています。さらなる人道支援や生活支援がなければ、2州合わせてイエメン人口の約4分の1を抱えるタイズ州およびホデイダ州は、飢饉の段階に陥る危険性があります。

イエメンは、食糧不足の「緊急的」または「危機的」段階にある推定1,700万人を抱え、現在、世界最悪の飢餓の危機に直面している国の一つです。この数字は、昨年6月から21%増加したことを示しており、2017年2月に発表した「緊急的な食糧不足と栄養状況の評価(Emergency Food Security and Nutrition Assessment」の結果を裏付けています。

紛争は、食糧の確保と生活に壊滅的な影響を与えました。イエメンの家庭の約80%は、イエメン危機発生前と比べて経済状況が悪化したと報告しています。国内生産量の減少、商業用および人道支援物資の輸入の途絶、食糧と燃料の価格高騰、厳しい失業率、収入の喪失、食糧支援を実施する国連機関に対する資金援助の相対的な少なさ、公共サービスや社会保障の崩壊など、これらのすべての要素が食糧確保の状況を悪化させています。

タイズ州とホデイダ州は、伝統的に食糧の生産地でしたが、イエメン危機が激化した2年前からは、暴力が集中する地域となりました。この2つの州は、イエメン国内で最も急性栄養不良率が高く、タイズでは17%、ホデイダでは25%となっています。世界保健機関(WHO)は、15%以上を緊急事態と設定しています。

「私たちは、イエメン史上最も高いレベルの急性栄養不良を目撃しています。急性栄養不良に陥っている220万人の子どものうち、46万2,000人は重度の栄養不良です。重度の栄養不良の子どもは、適切な時期に治療を受けられなければ、同じ年齢の健康な子どもたちに比べて死亡するリスクが10倍に高まります。現在進行中の紛争と食糧不足は、イエメンの子どもたちの健康と発達全体に長期的な影響を及ぼします」とユニセフ・イエメン事務所代表のメリチェル・レラノは述べました。

農業・漁業が崩壊、飢饉回避の緊急支援を

ここ数カ月に及ぶ紅海沿岸での戦闘は、イエメン最大の港のホデイダ港に甚大な損傷をもたらしました。それにより、イエメンが90%を輸入に頼っていた主食の輸入が中断されました。また貴重な食糧および収入の源であった漁業も、移動の制限、船や漁業用ネットなどの用具の損失により、崩壊しました。

沿岸地域での治安の悪化は、国内で生産している最も重要な穀物であるソルグムの4月の植え付け開始に影響を与えることが予想されます。加えて、貿易が妨害され、さらに多くの人が家を追われ、食糧供給の制限や人々の生活破たんがさらに増加することが予想されます。

イエメン全土では約200万世帯が農業に従事していますが、現在では、種や肥料、燃料や灌漑用のポンプなど耕作に必要な資機材が不足しています。燃料の高騰により、灌漑は手が出ないほど高価なものになっています。

治安の悪化によって、人道的支援の可能な地域は主要な町から数キロメートルに制限され、切実に支援を必要としている遠隔地には支援が届かないままになる可能性があります。

イエメンで活動する国連機関は、すべての紛争当事者に対し、緊急的に支援を必要とする人たちの増え続けるニーズに応えるため、人道支援機関が規模を拡大して支援活動ができるよう、無条件かつ持続的なアクセスを求めます。

プレスリリース:http://www.unicef.or.jp/news/2017/0056.html