カンボジア・ネパール・フィリピン・ソロモン諸島、低所得の女性の4人に3人が医療を受けられない
医療の受けやすさは、アジア太平洋諸国で過去10年間改善されてきましたが、農村部の低所得世帯の女性は、地理的要因と経済的要因から、依然として医療を受けるのが難しい状況にあります。
OECDの新報告書、「図表で見る医療:アジア太平洋地域 2018年版 -国民皆医療に向けた進歩を測る(Health at a Glance Asia/Pacific 2018 – Measuring Progress Towards Universal Health Coverage)」によると、カンボジア、ネパール、フィリピン、ソロモン諸島では、低所得世帯の女性の4人に3人以上が経済的理由で医療を受けることが難しい状態にあります。ネパール、パキスタン、ソロモン諸島では、極貧世帯の女性の約3人に2人が地理的要因で十分な医療を受けられていません。
本報告書によると、平均寿命がアジア太平洋地域の低中所得国及び低所得国では2000年以降、ほぼ6年伸びて70年に達しましたが、妊婦死亡率は依然として持続可能な開発目標がターゲットとしている値の2倍に上ります。
また本報告書では、幼児死亡率は、アジア太平洋地域の低中所得国及び低所得国では2000年以降劇的に下がり、多くの国々では50%以上減少しました。それでも、平均死亡率は1000人当たり30人で、これらの国々の幼児死亡率はアジア太平洋地域の高所得国とOECDの水準の8倍に上り、SDGのターゲットである1000人当たり12人という値の1.5倍に上ります。
この地域の多くの国々では、疾病の二重の負担、つまり妊婦と子供の死亡率の削減に苦慮すると同時に、慢性疾患の患者数が増加し不健康な生活習慣が蔓延しているという問題を抱えています。アジア太平洋地域では、成人の3人に1人以上が肥満、10人に1人が糖尿病に罹っています。子供でも、5歳未満の子供の5%、未成年者の20%以上が肥満です。2010年から2016年の間に、成人の糖尿病罹患率は33%、未成年者の58%に上昇しました。
本報告書のその他の結論は、以下の通りです。
・アジア太平洋地域の低中所得国及び低所得国の2000~2015年の妊婦死亡率平均は半分以下に下落したが、依然として10万人当たり140人で、SDGのターゲットである10万人当たり70人という値の2倍である。
・アジア太平洋地域の高所得国では、65歳以上の高齢者の人口に占める割合が2050年までに2倍となり、平均で27.6%に達すると予測されている。また、80歳以上の高齢者人口は3倍になり、10.2%に達すると見られている。高中所得国と低中所得国では、65歳以上と80歳以上の人口の割合は、それぞれ現状の2.5倍、4倍になり、65歳以上の割合は高中所得国では23.9%、低中所得国では14.5%、80歳以上は高中所得国では7.9%、低中所得国では3.5%に達する。
・アジア太平洋地域の低中所得国と低所得国では1人当たりの年間医療費は200米ドルを下回ったのに対して、高中所得国と高所得国ではそれぞれ670米ドル、3,450米ドルであった。この金額は、2015年には中所得国と低所得国平均で対GDP比4.3%を上回り、高所得国では7.3%を上回った。高所得国では医療費が2010~2015年に0.8%ポイント増加しており、中所得国と低所得国では0.4%ポイントの増加だった。
・医療費の家計負担の平均は、低中所得国と低所得国では2015年は医療費総額の48.2%で、2010年から1%ポイント上昇した。これらの国々では、2015年は薬剤支出が医療費総額のほぼ3分の1を占めている。
・所得と教育に基づく基本サービスの格差は、依然として大きい。例えば、低所得世帯の女性と高所得世帯の女性との妊婦管理の利用格差は、バングラデシュ、ラオス、パキスタンでは依然として極めて大きく、またインドネシア、ラオス、フィリピンでは、予防接種を受ける割合が高い教育を受けた母親を持つ子供と、教育を受けていない母親の子供とで50%以上もの差が生じている。
「図表で見る医療:アジア太平洋地域 2018年版」は、OECDと世界保健機関(WHO)との共著で、アジア太平洋地域の27の国と地域の人々の健康状態、健康の決定要因、医療資源とその利用状況、医療支出と財源、医療の質に関する主要指標を収録しています。本報告書は、アジア太平洋諸国の人々の医療の対象範囲、利用しやすさ、経済的保障の改善に向けて政策当局がさらに歩を進める一助となる、総合的で使いやすい枠組みを提供しています。
詳細情報は、以下のウェブサイトに掲載しています。
http://www.oecd.org/health/health-at-a-glance-asia-pacific-23054964.htm