2019-08-29

拡大する世界の武器取引、アムネスティがまとめ

武器貿易条約(ATT)が発効してほぼ5年が経過するが、世界の武器貿易はいまだに拡大傾向にある。各国首脳がジュネーブに会し、ATTを議論するこの機会をとらえ、各国に対し、取り組むべき課題がまだあることを再認識させる必要がある。

武器貿易条約は、アムネスティなどのNGOが連携した国際キャンペーン「コントロール・アームズ」による20年以上にもわたる取り組みから議論が開始され、2013年4月の国連総会で成立、2014年12月に発効した。

ATTは、武器や弾薬などが、ジェノサイド(集団殺害)、人道に対する罪、戦争犯罪に使用される、あるいは助長することが明らかな場合に、国家間の武器移転を禁じる国際条約だ。予測される武器輸出が、国際人権法や国際人道法の重大な違反を助長するリスクがどれだけあるのか、その分析と評価が毎年、行われている。

しかし、主要締約国の多くは、武器取引規制を守ると言いながら、重大な人権侵害に関わる国への武器売却を続けてきた。

以下に紹介する武器輸出入をめぐる数字や状況は、救いようのない事実を突きつける。数字は、ストックホルム国際平和研究所、スモール・アームズ・サーベイ、ウプサラ紛争データプログラムの各団体が収集したデータに基づく。

世界の武器関連金額

・2017年の世界の武器貿易総額は、少なくとも950億ドル(約10兆円)。

・軍需関連企業の上位100社で、3,982憶ドル(約42兆円)の売上を記録。

・2018年の米国の軍事費は、世界全体の36%を占める。

主要な通常兵器の輸出入

・米国は、武器輸出国として突出する。主な輸出先はサウジアラビアで、2014年から2018年までの5年間では、総輸出量の22%を占める。

・2003年以降、世界の輸出量は毎年着実に増加し、冷戦終結後、最高水準に達した。

・2014年から5年間の武器輸出上位5カ国は、米国、ロシア、フランス、ドイツ、中国。5カ国の総輸出量は、世界全体の75%を占める。

・同期間の武器輸入国は、上位からサウジアラビア、インド、エジプト、オーストラリア、アルジェリアである。5カ国の輸入総量は、世界全体の35%を占めた。

輸出上位5カ国

国別輸出先(調査期間は2014〜2018年。括弧内の数字は総輸出量に占める割合)

1、米国:サウジアラビア(22%)、オーストラリア(7.7%)、アラブ首長国連邦(6.7%)

2、ロシア:インド(27%)、中国(14%)、アルジェリア(14%)

3、フランス:エジプト(28%)、インド(9.8%)、サウジアラビア(7.4%)

4、ドイツ:韓国(19%)、ギリシャ(10%)、イスラエル(8.3%)

5、中国:パキスタン(37%)、バングラデシュ(16%)、アルジェリア(11%)

中東への武器移転(2014〜2018年)

・その前の5年に比べ87%増加。

・米国の総輸出の半分以上は中東向け。

・英国は59%。その大部分は、サウジアラビアとオマーン向けの戦闘機。

サウジアラビアとイエメン

・2014〜2018年は、サウジアラビアが世界最大の輸入国で、米国と英国からの輸入が圧倒的だった。

・サウジアラビアの武器輸入は、2013〜2017年で225%拡大。

・2014〜2018年、サウジアラビアは、米国から戦車338両、オーストラリア、カナダ、フランス、ジョージア、南アフリカ、トルコの6カ国から装甲車など4千両以上を輸入した。

小型武器と軽兵器

・世界には10億丁を超える銃が出回り、その大部分を市民が所有する。

・市民100人当たり、米国ではおよそ21丁を所持する。イエメンでは53丁、モンテネグロとセルビアで39丁、カナダとウルグアイで35丁だ。

・2017年、ベネズエラとエルサルバドルでは、銃による死亡率が世界で最も高かった。

・今後50年以内に軍用ライフル、カービン銃、ピストル、軽・重機関銃の生産が、世界で3,600万から4,600万丁に達するとみられる。

人的損失

・この10年間の武力紛争での死者は、2,436,351人だった。昨年1年では、77,320人だった。

・2017年、世界中で銃による犠牲者が急増し、およそ589,000人の死者を出した。特に中南米とカリブ海の国々で顕著で、深刻な社会問題化した。

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