2022-07-20

コロンビアとペルーへ逃れたベネズエラ女性への暴力が増加、アムネスティ調査

コロンビアやペルーに避難してきたベネズエラ人女性は、暮らしのさまざまな面でジェンダーに基づく暴力を受けており、それぞれの国が保障すべき暴力や差別からの保護・尊重からほど遠い状況に置かれていることがアムネスティの調査でわかった。

南北アメリカ各国にとってジェンダーに基づく暴力から女性を保護することは、母国での人権侵害から逃れてきた人びとの保護と同様に優先的に取り組まなければならない課題だ。だが、コロンビアやペルーに避難してきたベネズエラ女性たちは暴力や差別を受ける中、政府から十分な保護を受けていない。

ベネズエラではこの数年大規模な人権侵害が発生し、国外に避難した人は600万人を超える。このうち、コロンビアは184万人、ペルーは129万人を受け入れており、両国合わせれば、全避難民の半数以上になる。

アムネスティは、ベネズエラ難民は国際的な保護を必要としており、難民としての資格を求める権利があると考える。

アムネスティの調査で母国から逃れてきた女性は、性別や国籍で日常的に暴力や差別を受けていることが浮き彫りになった。社会からは避難の途中でも移り住んでからも暴力を受け、家庭ではパートナーから経済的、身体的、性的な暴力を受けている。仕事でも性的搾取にさらされる。

こうした暴力の横行を放置しているコロンビアとペルーの政府は、ベネズエラ難民の女性に暴力や差別のない生活を保障する義務、またジェンダーに基づく暴力の被害者に法的対応を保障する義務を果たしていないと言える。

男性から暴力を受け、身の危険にさらされているベネズエラ女性の多くは、滞在資格の問題による国外退去をおそれて、当局への通報を控えている。彼女たちを保護・支援する特別な枠組みがない中、暴力を受けるリスクは高まっている。まずは、暴力の被害を申し立てられるよう、滞在を正規化することが不可欠だ。

アムネスティは今年前半、ペルーのリマとトゥンベス、コロンビアのボゴタ、ククタ、ソアチャで聞き取り調査を実施した。ベネズエラ難民の女性63人に話を聞き、ベネズエラ人女性団体、国連難民高等弁務官事務所、UN Women(国連女性機関)、政府機関などから話を聞いた。

公式数字によると、ベネズエラ難民の女性に対するジェンダーに基づく暴力は、コロンビアでは2018年から2020年の3年間で71%、ペルーでは2019年から2021年の3年間で31%、増加している。彼女たちが抱える問題には、滞在資格、周囲の人たちが抱く外国人への恐怖感や治安を乱すという思い込み、セクシャリティに関わる偏見、男女の役割に関する社会の固定観念などがあるが、いずれの問題も深刻になるばかりだ。

アムネスティの調査で、両国の課題が浮かび上がってきた。

一つは、ベネズエラ人女性には国際的保護を受けたり移住を正規化したりする手段がない点だ。この点が、彼女たちが権利を確保する上での最大の壁になっている。

2点目は、コロンビアとペルーの両国は、ベネズエラ難民の女性が差別なく法的、医療的対応を受ける権利を保障していないという問題だ。この問題を担当する当局側には、性暴力被害者が享受すべき権利、心身の長期的ケア、保護措置に対する認識が不足し、また被害女性の国籍やジェンダー、性自認に対する固定観念がある。両国が抱える問題の中でも、この担当者の意識の欠如は特に深刻だと言える。

その他、被害者が利用できる一時保護施設がないこと、また、現状の施設や各種問題に関わる正確で十分な数値情報がないことも課題だ。

アムネスティは、コロンビアとペルー両政府に対しベネズエラ難民の女性が性別や国籍、滞在資格などに基づく暴力や差別を受けずに暮すことができるようにするための早急な対応を求める。具体的には、ベネズエラの女性に対する悪評や差別への対策をとること、被害女性が国際的な保護や包括的な医療が受けられるようにすること、法的な申し立てができるようにすること、ジェンダーに基づく暴力の対策を強化することなどである。

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