「アルカイダは空爆の被害に遭った私たち家族の状況を気遣い、食事や学校の制服までも提供してくれる。イエメン政府は何もしてくれない」。こう語るのは、弟を空爆で失ったイエメン人女性ヌールさん(仮名)。現地メディアのイエメン・タイムズがヌールさん一家を取材し、1月29日に出した記事だ。
1月26日、米軍の無人機がイエメンの中央部、シャブワ県との県境付近のマアリブ県を空爆した。ヌールさんの弟のモハメド君(13)がこの空爆で亡くなった。ニューヨーク・タイムズが報じた米国政府高官の話によれば、対テロ作戦の継続を示したものだという。モハメド・サーレハ・ドゥアイマン君以外には「アラビア半島のアルカイダ(AQAP)」のメンバー2人が死亡した。
ヌールさんの家族で空爆が原因で死亡したのは、これで3人目だ。父親のサーレハさんとモハメド君の兄ガラルさんは2011年10月に亡くなっている。
ヌールさんによれば、父親が殺害されて以来、経済的に家族を支援してくれたのはアルカイダだった。アルカイダは食べ物や学校の制服だけでなく、子どもたちが学習を続けられるようにペンやノートまでも買ってくれた。アルカイダが財政的に苦しいときは、武器をヌールさん一家に渡してくれたので、それを売って食べ物を購入できたという。
「家族を助けてくれているのはアルカイダ。アルカイダは家族の状態や必要なものを尋ねてくれる。イエメン政府が、私たち家族がどう暮らしているかなど尋ねてきたことは一度もなかった」
ただニューヨーク・タイムズは、モハメド君はアルカイダのメンバーだったと報道している。これに対してヌールさんらは、モハメド君がアルカイダのメンバーではないと強く否定する。ヌールさんの家はアルカイダの旗で覆われているものの、家族はアルカイダへの感謝とそのメンバーであることとは別としていた。
イエメン・タイムズが報じるアルカイダ関係者は次のように語る。「モハメド君は確かにアルカイダのメンバーだった。しかし、『活動員』と『支持者』は違う。我々の目的はモハメド君を将来的に活動員に加えることだった。子どもたちをリクルートしているのは本当だ。しかし、少なくとも15歳になるまでは訓練はしないし、活動員にはならない」
モハメド君がアルカイダの「メンバー」だったかどうかは定かでない。しかし住民の生活をアルカイダが支援し、共感を得ている側面はあるようだ。