世界銀行は4月7日、アフリカ経済について分析した報告書「アフリカの鼓動」を発表した。報告書は、サブサハラ(サハラ砂漠以南の)アフリカ地域では天然資源とインフラへの投資拡大、個人消費の堅調な伸びが続いており、経済成長率は2013年の4.7%から2014年には5.2%、さらに2015年には5.4%へと成長すると予測している。
■インフレ率は6.3%へ低下
アフリカでは、未整備のインフラや不安定な電力供給などビジネス面でのコストがかかるにもかかわらず、高い経済成長率や豊富な天然資源を背景に、資本の流入が活発だ。流入額は対国内総生産(GDP)比で平均5.3%と、途上国全体の平均3.9%と比べて高い。この流れが投資を促し、生産能力の向上をもたらしている。
また、インフレ率が2012年の10.7%から2013年には6.3%へと抑えられたことで、個人の購買力が強まり、消費が増えている。海外送金の増加や観光産業の成長なども、雇用の創出、個人所得の増加につながっている。
ソフトウェア開発やコールセンターなど情報サービスの輸出も堅調だ。例えば、2005年から2012年にかけて、ルワンダでは情報サービス関連の輸出が約4000万ドル(約40億円)から約8500万ドル(約85億円)へと倍増した。モーリシャスとタンザニアでも同様の輸出が年10%以上のペースで成長している。
■輸出先の2割以上が中国
一方で、報告書はアフリカ地域の急激な成長に伴うリスクについても分析。これまで金属を大量に輸入していた中国の需要が低迷し始めたことによる金属(一次産品)価格の下落、気候変動の影響(主に干ばつ)や通貨の乱高下による食糧価格の変動、南スーダンの治安悪化など社会的、政治的に不安定な状況が引き起こす経済的打撃が、人々の暮らしに深刻な影響を与える恐れがあると警鐘を鳴らしている。
こうしたリスクを回避するために、報告書は今後のアフリカの貿易戦略として、輸出品目と輸出相手国の多様化を挙げている。アフリカ諸国の多くは輸出を天然資源に依存しているが、資源輸出は経済成長の大きな原動力となる一方で、国際価格の変動に脆弱な側面もある。輸出品目を増やし、リスクを分散することが、市場の外的なショックに対応する上で重要だ。
また、現在の主な輸出先はBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)で、特にサブサハラ・アフリカは対中国輸出が同地域の商品輸出の23.3%を占めている。中国経済が減速した場合の影響を考えると、輸出先の分散も課題になってくるという。(鈴木瑞洋)