48年ぶりに東京で開催されている国際通貨基金(IMF)・世界銀行総会にあわせて、国際NGOオックスファムは10月9日、「IMFと世銀は、食料価格の高騰とユーロ危機の影響で苦しむ途上国への支援を強化すべきだ」との声明を発表した。
今回のIMF・世銀総会では、食料価格の高騰や気候変動がもたらす農業への影響、ユーロ危機などについても議論される。「食料の高騰や援助の削減、資金フローの減少はすべて、貧困国に深刻なしわ寄せをもたらしている」(オックスファム)。食料高騰とユーロ危機の“ダブルパンチ”は、援助に依存せざるを得ない貧困国で暮らす人たちを窮地に追いやっている。
食料の国際価格は、2008~09年に起きた食料危機の最高値に近づきつつある。ユーロ危機が引き起こす欧米の景気後退は貧困国の歳入を悪化させる。さらに深刻なのは、食料価格の高騰が引き金となって、資源競争が激化し、途上国の土地を奪い合う動きがこれまで以上に活発化する危険性をはらんでいることだ。
オックスファムのスポークスパーソンであるエリザベス・スチュアート氏は「食料高騰に伴い、投資家による途上国の土地の買い占めが広がっている。過去10年間で、日本の国土の6倍の大きさに相当する、途上国の土地が売却された。多くのケースでは、貧しい住民は立ち退きを強制されている。事前の協議もなく、彼らは十分な補償も受けていない」と問題点を指摘する。
途上国への投資機関、政策助言機関として世銀は、協議や補償なしに貧しい人たちが立ち退きを余儀なくされる事態を防止する力をもっている。オックスファムは「世銀は、貧困層の暮らしと食料源を保護しなければならない」として、世銀に対し、土地の購入を伴う農業投資を一時凍結し、土地収奪を防止するために高度な投資基準を導入するよう呼びかけている。
オックスファムはまた、IMFに対して、社会の安定や所得格差の是正、保健医療や教育分野向け支出の増額を可能にする政策的柔軟性を途上国政府と協力して確保すべき、と注文を付けた。
オックスファムの試算によると、ユーロ圏が分裂する事態が起きた場合、最貧国は貿易と海外からの投資の減少で300億ドル(約2兆3500億円)の損失を被るという。(長光大慈)